成功させるぞ!ダイエット大作戦
動物は生きていくためにはカロリーを使わなくてはなりません.カロリーは食べ物から取らなければなりませんが,余計に取ってしまうと、足りなくなった時のために体に脂肪として貯えることができます.それが多くなりすぎると肥満になってしまします.逆に必要なカロリーより不足している場合は,不足した分を体の脂肪が分解・代謝されてカロリーとなり補ってくれます,その結果,脂肪が減って体重も減少していきます.このとき気をつけなければならないのは,筋肉も減ってしまうことがあるので,筋肉が減らないようにたんぱく質がしっかりと含まれていて,脂肪が少なくなっているような食事(減量用処方食)を利用する必要があります.もちろん筋肉を減らさないためには適度な運動も必要となります.
今の病気を治療しなければなりませんので,病気のための治療食を続けてください.太ってきたということはカロリーを多く与えすぎているということです.すなわち,今,与えている食事量ではカロリー過剰状態になっていますので食事量を減らしてみましょう.その子にとっては治療食のパッケージに書かれている量が多すぎたのでしょう.
避妊,去勢をすると一般的に運動量が落ちます.性ホルモンを作る場所を取ってしまいますので,性ホルモンを作る必要がなくなったり,性ホルモンによる活動がなくなるので,使用するエネルギーが少なくなりカロリー消費が減り,そのため太りやすくなります.さらに性ホルモンは食欲を抑制することも分かっていますので,避妊,去勢後は食べ過ぎてしまうこともあります.多くの場合,今まで与えていた通常のフードで様子を見ていただいて問題ありません.
様子をみていて肥満になりそうでしたら食事量を少な目にするか、避妊,去勢後の肥満防止用フード(犬:「ニュータードケア(ドライ)」,猫:「メールケア(ドライ)」「フィーメールケア(ドライ)」)に変えるか考えましょう.
減量用療法食のパッケージに書かれている給餌量はメーカーにより,体重も現在の体重で書かれていたり,目標の体重で書かれていたりと様々です.これらのパッケージに書かれているものはあくまでも標準的なもの,すべての個体に適しているとは限りません.動物によっては表示量よりももっと減らした食事量でないと減量効果を示さない個体も存在します.1週間当たり体重の1%から1.5%減るのが適切といわれています.この割合になるまでフードを減らしても問題ありません.標準的な食事量で減量効果が認められない場合には,一度,病院スタッフにご相談ください.定期的に病院へ来ていただき、体重の減少割合から適正な量かをチェックさせていただき,必要があれば食事量の変更などを指導させていただきます.
個々の動物の状態によって異なります.目標としていた体重に減量が出来た場合は,次にその体重を維持できるフードにしなければなりません.減量用療法食で体重を維持できていればこのまま続けても構いませんし,続けなければ太ってしまう場合もあります.しかし目標の体重を超えて痩せていくようであれば肥満防止用,体重維持用のフードに変えなければなりません.かなりの高齢の動物ではさらに痩せてくることがありますので,そのときはシニア用フードなどに変える必要があります.
減量用療法食を食べ残しても、そのまま続けて様子を見て下さい.食べないからといって今までのフードを増やさないようにしましょう.今までのフードの量が減り足りなくなるとあきらめて食べるようになります.それまではおやつもを与えるのも止めてください.それでも1日何も食べないのであれば、療法食を他のメーカーのものに変えてみましょう.(各メーカーの減量用療法食のサンプルは当院で差し上げることができますので,遠慮なくお申し出ください)
本当は出来るだけゆっくりの方が良いのですが、目安がないと達成が難しくなります.目標体重の設定も期間もご家族と相談のうえ動物に無理のない範囲で設定するよいでしょう.1週間に体重の1%から1.5%が減るペースが健康に良いと言われています.ひと月で5%ぐらい,3ヶ月で15%ぐらいのペースがひとつの目安になると思います.
猫の場合は急激な減量をすると肝臓に負担がかかる場合がありますので,太っている猫ほどゆっくりやせさせてください.
一度に多くを食べるより,分けて食事を与える方が空腹を避けられ,健康の面からも良いと言われています.食べることそれ自体がエネルギーを使いますので減量にとっても良いことになります.食べることによってフードのカロリーの約10%を使用します.ですから,回数が多い方が良いのですが、通常朝と夕方の2回に分けていただければ良いと思います.3回に分けられる場合はヒトと同様でも結構です.寝ている間は消化管の働きは活発になり,栄養を蓄える方へ体は働きますので,あまり遅い時間に食事を与えるのは避けた方が良いでしょう.
一般的に減量用療法食は以前与えていたフードよりカロリーを低くさせるためかなり繊維質が多くなっています.そのためにウンチが硬くなったり,量が多くなり,排便回数が増えるワンちゃんもいます.ウンチを我慢しているようでしたら、短時間でよいですから排便目的で外に連れ出してあげてください.減量用療法食はカロリーを抑えてカサを増すために繊維質を多くしていますので,このような問題はある程度仕方のないことなのですが,メーカーによっては空気で膨らましてカサを出し、繊維質を多くしていない減量用療法食もありますので,そのようなフードを試してみるのもひとつの解決策になるかもしれません.
減量が止まってしまったということは,その動物において,今の体重と与えている食事量が丁度合っているということ,つまり摂取カロリーと消費カロリーが一緒になっていると言うことを意味します.動物にはそれぞれ個体差がありますので,最初の標準的な給餌量の設定はで不十分であったということです.目標体重に到達するためには,今の体重を基準に給餌設定量を見直してさらに与える食事量を減らす必要があります.あるいは,消費カロリーを増加させるために散歩の時間を長くする事も良いかもしれません.
お腹がすいていることを忘れさす為には出来るだけ一緒に遊んであげてください.活発な活動をすると空腹感がなくなります.空腹感を無くすためにキャベツなどを混ぜて食事の量を増やしてあげるのもひとつの方法です.また減量用療法食をおやつとして利用し,食事以外に食べる回数を増やすことも有効な場合があります(この場合は,おやつとして与えた分だけ食事量を減らす必要があります).
1日の減量用指定量さえ守っていればだらだら食いでも問題ありません.猫はもともとだらだらと食べる性質を持っています.それでも食べる量を自ら調節する能力を持っていたのですが,家のなかで飼われるようになって調節できなくなってきました.しかしトータル量を守っているなら全然構いません.
猫の場合、まったく食べない場合は何かを食べさせなければなりません.2日以上食べないと肝臓の病気(肝リピドーシス)になって死んでしまうことがあるからです.食べなければ以前食べていたフードを少し混ぜてみましょう.少しでも食べているのでしたらその状態をしばらく続けてみてください.それでも残してしまう状況が続くようでしたら,減量用療法食を他のメーカーのものに変えてみる(各社のサンプルは当院で準備できます).嗜好性をあげるためにカロリーの低い液体サプリメントなどをドライフードにかけてみるなど工夫をしてみる事ことも価値があると思います
可能なら肥満の猫の食事を別の部屋にしていただくことが一番良い方法です.普通食を食べている猫が食事を完了するまでは肥満猫は別の部屋に隔離しておき,絶対に普通食を盗み食い・横取りさせない環境を作る必要があります.もしそれが出来ず,他のネコの普通食を食べてしまうのであれば減量用のフードを与えても減量はなかなか成功しません.残念ながら,この問題は食事環境の問題であって食事だけでは解決できないことです.
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企画・編集 石堂動物病院