消化管寄生虫のお話
生後2〜3ヶ月以内の子犬・子猫が、感染能力のある虫卵を口から摂取してしまうと、虫卵は小腸で孵化し、体内を移動しながら成虫になり、小腸へと戻ります。口に入ってから約60日で成虫となり産卵を開始します。そして子犬・子猫の排便により感染能力のある虫卵が外界にばらまかれ、時に成虫自体が出てくることもあります。外界にばらまかれた虫卵が他の犬・猫の体毛や足裏に付着し、その部位を舐めることでさらに感染が拡がります。
成犬・成猫が経口感染した場合は、小腸で孵化した後に体内に潜んで時を過ごし、胎盤感染へと続きます。
母犬の体内に潜んでいた幼虫は、母犬が妊娠することで活動を再開し一部の幼虫は胎盤に移動します。幼虫は子宮内では胎児の肝臓に留まり、出産後は肝臓から肺、さらに気管を経由して小腸に達し約2〜3週間で成虫になり、産卵を開始します。この胎盤感染が主たる感染ルートです。(猫では胎盤感染はありません)
母犬・母猫の乳腺に幼虫が移動し、その乳腺から母乳を飲むことで子犬・子猫が感染します。感染幼虫は子犬・子猫の小腸で成虫となり、産卵を開始します。
腸管内に寄生している回虫は、主に犬・猫が消化した食物を栄養源としています。大人の動物では無症状の場合がほとんどですが、幼犬・幼猫に多数寄生すると栄養の消化吸収が妨げられ発育不良となります。また、腹痛や下痢、嘔吐で虫体を吐くこともあります。虫体が大きいので多数寄生の場合には、お腹がぽっこりとした太鼓腹になり、腸管が詰まってしまうこともあります。特に幼犬・幼猫の重度寄生はかなり危険な状態となりやすいので少しでもおかしいと感じたらすぐに動物病院へ行きましょう。
回虫症を疑わせるような症状がある場合は、まず検便(糞便検査)を受けましょう。回虫卵(右図)が認められた場合は、駆虫を行いましょう。(虫卵が認められなくても心配なら予防的駆虫を行いましょう)
消化管内の回虫は駆虫薬の投与によって死亡し、便とともに排泄されてきますので驚かないでください。完全に駆虫されたかの確認のために1〜2週間後に、再度、検便を行いましょう。
日常的な予防としては、道端に残されたウンチの臭いを嗅がせないようにしたり、もしウンチを踏んでしまったらその足をよく洗ってあげるなど、虫卵を含んだ便との接触が起こらないように気をつけましょう。