消化管寄生虫のお話
鞭虫が寄生している動物の便には、鞭虫の未成熟卵が多数含まれています。それらの未成熟卵は土の中で約1ヶ月間かけて虫卵内に幼虫を形成します。幼虫を含んだものを成熟卵と言います。外で暮らしている犬が成熟卵に汚染されている土を舐めてしまうことで経口感染が成立します。
鞭虫は腸粘膜に侵入します。鞭虫の寄生が少ない場合ははっきりとした症状はなく、血液の混ざった粘液便が時々出る程度です。しかし、多数寄生の場合には、食欲不振、慢性的な下痢、タール状の血便、痩せてくる、毛並みが悪くなるなどの症状を示します。
鞭虫症の疑いがある時は、検便(糞便検査)を行いましょう。検査によって鞭虫卵が(右図)確認された場合は駆虫薬を投与します。確実に駆虫できたかの確認のため、鞭虫の産卵サイクルに合わせて1度目の駆虫から約2ヶ月後に再度、検便を行いましょう。もし犬の生活している場所の土が感染源となる状況になった場合は、1度感染源となった土を清潔で安全な場所に戻すことは大変なので、生活する場所そのものを変える必要があります。
感染した犬・猫の便には虫卵が含まれています。水辺で排泄された便から虫卵が水中へ落ち、その後孵化します。それをミジンコが摂取し、そのミジンコをオタマジャクシ・カエルが食べ、さらにその蛙を蛇や鳥が食べることで感染サイクルが出来上がります。こうした感染能力をもった蛙や蛇を犬・猫が補食することで感染が成立します。
摂取された幼虫は、犬・猫の小腸粘膜で成虫(右図)へと成長します。成虫の長さは1m以上にもなり、犬・猫の消化管内は異物がある状態になるため下痢を起こします。また、マンソン裂頭条虫は虫体の体表から栄養を吸収するため、犬・猫を栄養不良にしてしまうこともあります。
マンソン裂頭条虫が疑われる時は、まず検便(糞便検査)をしましょう。寄生虫の虫卵(右図)は感染動物の便にくっついて排泄されますので、便を検査することで感染しているのかがわかります。感染している場合は駆虫薬を投与します。ただ、マンソン裂頭条虫の成虫はたいへん大きいため、他の消化管寄生虫と比べて約6倍の薬用量の駆虫薬が必要となります。予防法としては、感染経路を断ち切るために犬・猫が蛇や蛙などを食べないように注意しましょう。また、自然が豊富な環境で飼育している場合には定期的な検便をすると良いでしょう。
猫条虫の虫卵は感染した猫の便の中に排泄される虫体の一部である片節の中にあります。虫卵を含むこの片節は感染後30〜40日で便と一緒に排泄され始めます。この片節は外界に出た時にはすでに壊れており、中の多数の虫卵がばらまかれることになります。その虫卵をネズミが摂取し、そのネズミを猫が補食することによって感染が成立します。
猫条虫が寄生すると食欲低下、下痢・嘔吐、腹痛などがみられますが、多数寄生でないと目立った症状を示しません。時に、条虫の片節が肛門から出てくるので肛門周囲の痒みを引き起こす事があります。
この感染症が疑われる時は、まず、動物病院で検便(糞便検査)を受けましょう。猫条虫の虫卵・片節は感染動物の便にくっついて排泄されますので、便を調べることで感染しているかどうかがわかります。感染している場合は駆虫薬で駆虫しましょう。予防としては、猫がネズミを補食しないような環境を作ることです。