犬の認知症の治療
犬の認知症発症の原因は「酸化ストレス」と言われています。「酸化ストレス」とは、「活性酸素による酸化反応により引き起こされる生体にとっての有害な作用」です。
呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部は「活性酸素」という物質に変わります。「活性酸素」は、元の酸素よりもずっと他の分子を酸化する能力が高いという性質を持っています。この「活性酸素」は他の物質に結びついたり働きかけたりする力が強く、生命活動に欠かせないDNAやタンパク質などの物質を傷つけてしまいます。しかし活性酸素は、細菌やウイルスなどを退治する免疫にも重要な役割も果たしています。なので、生体は活性酸素にうまく働いてもらうために、そのパワーを抑える「抗酸化力」による酸化ストレスの防御系を備えています。しかし、活性酸素が増えすぎて、抗酸化力では抑え切れなくなって両者のバランスが崩れてしまうと、酸化ストレスが大きくなりすぎ、生体への有害反応が引き起こされるのです。
脳は酸化ストレスの影響を受けやすい組織であり、酸化ストレスによる脳への影響/ダメージは大きなものとなります。犬の認知症の脳の病理組織では、脳の灰白質の萎縮、脳表面の微小出血巣、脳血管壁へのアミロイド沈着、神経細胞数の減少などが認められます。しかし、これらの肉眼的、病理的変化はいずれも犬の加齢によって生理的に認められるものでもあります。
認知症発症の原因は、加齢により酸化ストレスの防御系が破綻して、脳組織が酸化ストレスの影響を受けることで、脳実質、神経細胞数/神経伝達物質の減少と脳血管壁のダメージによる脳の循環不全が生じることだと考えられています。そして、犬の認知症の一番の危険因子は年齢、つまり高齢であるということです。