動物の腫瘍のお話(その2)
多中心型リンパ腫は体表にあるリンパ節が腫れるタイプのリンパ腫で、犬ではもっともよく見られます。体表リンパ節とは顎の下、首の付け根、腋の付け根、内股、膝の裏側などにあり、これらの場所にしこり状の腫れがあることで発見されます。病気が見つかった時は、リンパ節が腫れている以外は無症状であることがほとんどです。
腫れているリンパ節も最初は痛みがありません。しかし、病気が進行するといろいろな所に転移(肺や骨髄が多い)して、食欲不振、体重減少、悪液質、臓器不全などの症状を引き起こします。最終的には内臓臓器への転移による臓器不全、骨髄への転移による血球減少症、悪液質などによって死に至ります。
診断は体表リンパ節の腫大の確認とリンパ節の細胞診で腫瘍細胞を確認することで行います。
抗癌剤を用いた積極的な化学療法で、リンパ腫の症状が消失する「寛解」と呼ばれる状態にすることのできる可能性が最も高いタイプです。
縦隔型リンパ腫は心臓の前方に位置する縦隔リンパ節が腫れるタイプのリンパ腫で、リンパ腫の症例の約5%を占めます。縦隔リンパ節が腫れることによって肺が圧迫され、呼吸困難の症状が現れます。
最初に気づく異常は呼吸困難のサインで、呼吸が速い・苦しそう、咳をする、チアノーゼ、運動すると疲れやすいなどです。病気が進行すると縦隔リンパ節がさらに大きくなり胸腔内を占拠したり、胸水が貯まることによってさらに呼吸困難を悪化させ死に至ります。
診断は胸部のレントゲン検査と縦隔リンパ節または胸水の細胞診で腫瘍細胞を確認することで行います。
消化器型リンパ腫は、消化管の粘膜内で腫瘍化したリンパ球が瘤をつくったり、腸間膜に存在する腸間膜リンパ節が腫れるタイプのリンパ腫で、リンパ腫の症例の5〜7%を占め、雌に多く発生します。症状は腹腔内に腫瘤が触れる、食欲不振、体重減少、吸収不良、下痢などです。
病気が進行すると腹腔内の腫瘤が大きくなり他の内臓臓器を圧迫して食欲が廃絶したり、肝臓・脾臓などに転移して死に至ります。
診断は、腹部レントゲンや超音波検査で腹腔内のリンパ節の腫大を確認し、全身麻酔による開腹手術でのバイオプシー(病変部の一部を採材すること)や内視鏡でのバイオプシー、腹部の腫瘤が大きければ皮膚から針を刺しての細胞診で行います。
このタイプのリンパ腫は炎症性腸炎(非腫瘍性の消化器病)との区別が難しいと言われています。
皮膚型リンパ腫は老齢犬での発生が多く、皮膚に潰瘍状の病変から結節状の病変まで様々な形の腫瘍病変を示すタイプのリンパ腫です。
初期病変は皮膚病と間違われる可能性もあります。発生は少なく、発生の詳しいメカニズムもよくわかっていません。皮膚型リンパ腫は皮膚表面を主病変とするタイプと、皮膚の下の組織(真皮)を主病変とするタイプに大別されます。病気の進行は遅いですが、化学療法への反応が悪いものが多く、全身への転移のために死に至ります。
診断は病理組織検査でのみ可能です。
その他のタイプとして発生は少ないですが、中枢神経系(脳や脊髄など神経組織)に発生するもの、眼球内に発生するもの、鼻腔内に発生するものがあります。これらをまとめて節外型リンパ腫と呼びます。
節外型リンパ腫は発生した部位によって様々な病気の経過をとります。確定診断の方法はより複雑で、CT やMRI などの高度診断器機でないと行えないような場合が多いようです。