心臓の病気のお話(その2)
フィラリア症には突然の呼吸困難と虚脱,喀血などを伴って急死する急性型の大静脈症候群と呼ばれるタイプと,咳を伴った呼吸障害と運動不耐性や腹水などの症状を示す右心不全を示す慢性型のタイプに大別されます.
フィラリア症の予防が一般化してきたこの頃では,急性タイプの発生はほとんど見られなくなりました.心臓に住み着いたフィラリア成虫が増えすぎ,肺動脈から右心室・右心房,ひどい場合には心臓へ流れ込む血管である大静脈にまで虫体が逆流してきて,血液の循環障害を引き起こします.
症状としては,突然の虚脱,赤いおしっこ(血色素尿),喀血,呼吸困難などです.このタイプは急激な衰弱と死をもたらします.
現在,見られるフィラリア症の症例の大部分がこの慢性型のタイプです.肺動脈に住み着いたフィラリア成虫が原因で様々な症状を引き起こします.
肺動脈に住み着いたフィラリア成虫の影響で,肺動脈の血管内皮が傷害を受け,また,血管周囲の肺実質にも炎症病変が拡がります.これらの炎症病変が原因で咳を伴った呼吸障害が発生します.
また,肺動脈で生活していたフィラリア成虫が寿命などで死んだ場合には,その死体が末梢の動脈に流れ込み血管を詰まらせます.その結果,肺動脈が太くなったり,血管の蛇行や捻れが生じて血液の流れに支障がでる循環不全(右心不全)が生じ,腹水が溜まったり,肺高血圧症を引き起こします.
症状としては,右心不全に伴う腹水の貯留,運動不耐性,不整脈の発現などです.