歯周病を考える
図1:歯肉炎と呼ばれる初期の段階.
歯肉の赤みもそれほど目立たず、
歯石もわずに見られる程度
歯みがきなどが不十分だったりすると歯の表面や歯と歯肉の間(歯肉縁窩=歯肉ポケット)に,食べかすや唾液中の成分がたまり細菌が繁殖し始めます.白い歯は黄色から徐々に茶色っぽい色になり,歯肉は赤っぽく腫れてきます.白〜淡黄色の歯石が少し見られることもありますが,それほど目立ったものでもありません.症状としてはまだ軽く、この段階が「歯肉炎」(図1)です.
これが段々と進行してくると,歯肉縁窩が深くなり,歯周ポケットと呼ばれる状態になります.その中で細菌はさらに繁殖し,バイオフィルムというものを作り出します.これは,ぬるぬるとした感じがするバリアのような役目をするもので,酵素や抗生物質でもこのバリアを破ることがほとんどできないようになります.
歯肉の赤みと腫れは増し,歯垢や歯石もより多くなって,口臭も感じられるようになります.そして,歯肉以外の歯を支える歯周組織(歯根膜・歯槽骨・セメント質)に炎症が拡がり,時に痛みを伴うような場合も存在します.ここまでくると、「歯周炎」(図2)と呼ばれる状態になります.
図2:歯石が目立ってきている.上顎の第4前臼歯は歯石がつきやすいというのがよくわかる.歯肉の赤みや腫れも増し,口臭も感じられ、歯周炎へと進行している
「歯周病」とは,この「歯肉炎」と「歯周炎」のことを指します.
一度歯石ができると歯垢がつきやすい環境となり,歯周病がさらに進行し,程度によっては歯肉縁窩に膿がたまり外に漏れ出てくることがあります.この状態を「歯槽膿漏」と呼びます(図3).歯周病に痛みのために,食欲があっても食べられなかったり,痛みのストレスにより全身の健康状態にも悪影響をおよぼすこともあります.炎症によって細くなった顎骨は,骨折を起こしやすくなったり,鼻や目に炎症が波及することもあります(図4).
図3:歯石沈着が激しく,歯と歯茎の間には化膿液ら見られる.ほとんどの歯がぐらついているので,抜歯をするしか治療法がない.
図4:歯根周囲部まで炎症(感染)がおよぶと,眼の下付近の皮膚に穴があいてしまう事もある
(外歯瘻:がいしろう).