アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の診断は以下の順番で行ない総合的に判断されます.
(1)病歴をしっかりと聞き取り調査すること
(2)痒みを症状とする他の皮膚病を除外する
痒みを主症状とする皮膚病としては,
各種検査結果に基づく治療や診断的治療によって,痒みが消失した場合は,その痒みはアトピー性皮膚炎が原因ではないと言えます.痒みが軽減した場合は,アトピー性皮膚炎が疑われ,上記の原因による皮膚病はアトピー性皮膚炎が慢性化したための,続発症(合併症),増悪因子であったと判定します.痒みに変化がない場合は,アトピー性皮膚炎が強く疑われます.
(3)アトピー性皮膚炎の診断基準との適合
アトピー性皮膚炎が疑われたら,以下に示す診断基準に適合しているかを考えます.
<Favrot によるアトピー性皮膚炎の診断基準:2010>
これらのうちの5項目が該当する場合は,アトピー性皮膚炎である正確性は85%であると言われています.この段階で「アトピー性皮膚炎」と診断されます.
(4)環境アレルゲンの特定(アレルゲン特異的IgE検査)
アトピー性皮膚炎と診断されたら,次にその原因となる環境アレルゲンが何なのかを調べます.
原因を特定することで治療法や治療期間が検討できます.
環境アレルゲンの特定は,血液を採血して「アレルゲン特異的IgE検査」を行います.環境アレルゲンとして考えられる食物を含む40種類の項目を評価します.この検査のための40項目は、日本にあるアレルゲンの中でヒトのアレルギーの原因として頻度の高いものが選択されています.当院ではこの検査を「動物アレルギー検査株式会社」に依頼してます.
アトピー性皮膚炎の症状があるにも関わらず,環境アレルゲンに対するIgEが検出されず,食物アレルゲンに対するIgEだけが検出された場合は食物アレルギー(IgEタイプ)と判定します.また,アトピー性皮膚炎の症状があるにも関わらず,すべての項目でIgEが検出されない場合は,リンパ球タイプの食物アレルギーの存在を疑います.環境アレルゲンと食物アレルゲンの両方のIgEが検出されたら,アトピー性皮膚炎と食物アレルギーが混在してると考えます.
アレルゲン特異的IgE検査で,原因アレルゲンが特定できたら「○○○が原因のアトピー性皮膚炎」と確定診断ができます.
皮内反応検査:最も信頼の高い検査と言われています.検査方法は,毛刈りをした皮膚に直接,少量のアレルゲン物質を注射して,発疹(ほっしん)が発現するかによってアレルゲンを特定する検査法です.多くのアレルゲン項目を検査するにあたっては,広い範囲の毛刈りが必要になります.また,検査手技が煩雑になります.
これらの理由から皮膚病専門の動物病院や大学病院で実施されることが多い検査です.
血液検査によるアレルゲン特異的IgE検査が利用できるようになったことで,一般の動物病院でこの検査を積極的に行っているところは少なくなってきています.
食物アレルギーとは食物が原因(アレルゲン)となってアレルギー反応が起こり,皮膚の痒みを引き起こす皮膚病です.その症状はアトピー性皮膚炎に似ています.診断法や検査法がアトピー性皮膚炎のものと若干違っています.
非常に難しく,やっかいな病気なので,この病気の解説はまたの機会に解説します.