「下痢」って?
これらの食事関連のことが消化管運動の亢進を引き起こす可能性があります。
消化管運動が亢進すると、吸収されるべき消化物内容が消化管内を素早く流れてしまいます。その結果、腸管粘膜との接触時間が短くなり、水分の十分な吸収が行われなくなり、下痢を引き起こします。
幼齢/高齢の動物は免疫力が弱く、新しい生活環境の変化にすぐに慣れないことがあります。また、ペットホテルやトリミングサロンなどの初めての体験もストレス/緊張の原因となります。これらのことは、ヒトの「過敏性腸症候群」と呼ばれるものと同じで、消化管運動の亢進を引き起こし、下痢を誘発する可能性があります。
回虫、鉤虫、鞭虫などの消化管寄生虫、コクシジウム、ジアルジアなどの原虫は、腸管粘膜の炎症を引き起こし、消化管における水分の吸収障害、組織液などの炎症性産物の増加による分泌物増加を引き起こします。その結果、消化管内の水分が増え下痢を引き起こします。
病原性の大腸菌やサルモネラ菌などによる細菌感染症は、正常な腸内細菌叢のバランスを崩し、粘膜の炎症を引き起こします。また、生体が細菌毒素を希釈して体外に排泄しようとして消化管内への水分分泌が増加することで下痢が引き起こされます。
ときに消化管の炎症が重症化すると腸管からの出血が起き、タール状やジャム状の軟便〜下痢便が見られることがあります。また、炎症により消化管の運動が停滞すると、腸内細菌の異常増殖によって下痢が起こり慢性化することもあります。腐ったものを食べたせいの食中毒も細菌感染のひとつです。
ウイルス感染はパルボウイルス/コロナウイルス感染症などです。ウイルス感染による腸炎が下痢を誘発します。パルボウイルス感染症は致死的なウイルス性腸炎で、下痢便の臭いが強烈であり、血が混じった血便を示します。パルボウイルス感染症は、ワクチン接種をしていれば予防できる病気です。
多様な内臓疾患の症状のひとつとして下痢が認められます。下痢を症状とする内臓疾患は数多く、下痢の発生機序も多様で、ここで全てを説明することができません。
下痢を症状のひとつとする代表的な病気のいくつかを説明します。