「猫の膀胱炎」のお話
「猫の特発性膀胱炎」は、ストレスなどが関与しているので、なかなか根治は難しい(無理?)病気です。そして、細菌が原因ではないので、急性に症状を発症しても5~7日以内に症状が消失することも考えられるので、抗生物質の長期投与は基本的に必要ありません。なので、この病気に対しての治療は、排尿困難に伴う痛みに対する鎮痛剤の投与、尿道閉塞が生じた時の閉塞解除処置などのような、猫ちゃんが苦しんでいる状態をできるだけ早く解消してあげることが治療のメインとなります。
「猫の特発性膀胱炎」において1番大切な事は、この病気を発症させない、再発させないようにする事です。そのためには、ご家族の方が自宅において、(1)猫が濃い尿を作らないように、(2)猫がストレスを感じないように、いろいろと対策を考え実行してもらうことが必要になります。
■ウエットフード(缶詰、パウチ製品)を多く与える。
→水飲みの器の数を増やす。
→食事の器と水飲みの器の場所を離して置く。
→猫ちゃんの好きな飲み方を見つける(猫ちゃんによっては流水を好む場合もあるので、このような猫ちゃんには循環式給水器などを使うなど)。
■トイレを快適に!:おしっこを我慢しないような生活環境を作る。
■猫ちゃんはどのような事にストレスを感じているのか?
上記のようなストレス要因が存在するかどうかをご家族で検討して、それぞれのケースにおいて可能な範囲で、猫ちゃんにストレスのない環境改善策を実施する。
「フェリウェイ」は猫のフェイシャルフェロモンF3類似縁化合物を含む『フェロモン製剤』です。フェイシャルフェロモンF3とは、猫がお気に入りの物などに頬をこすりつける行為で生活環境中に分泌されるフェロモンです。このフェロモンは、猫の縄張りの維持やマーキング行動と関連があり、猫に安心感を与え、落ち着かせ、ストレスを緩和させる作用があります。
速効性はありませんが、猫ちゃんに安心できる(ストレスのない)生活環境を作ってあげるために、焦らずに根気よく試してみてください。
ヒルズ社のプリスクリプション・ダイエット:「<猫用>c/dマルチケアコンフォート」は、猫の尿ケアをサポートする特別療法食で、特発性膀胱炎再発時の89%のケアに役立つこと科学的に証明されています。
この療法食に含まれているL-トリプトファンは不安や興奮を抑制するセレトニン物質で、加水分解ミルクプロテインは脳内のGABA受容体に結合し、ストレス症状を軽減する効果があります。また、膀胱内の炎症の悪循環を断ち不快症状の軽減に役立つオメガ-3脂肪や、膀胱内壁粘膜組織を構成するグリコサミノグリカンが配合されています。
また、この療法食はストラバイトおよびシュウ酸カルシウム結石にも対応しており、塩分も控えめで長期に与えても安心。ドライとウエットタイプがあり、嗜好性も高いフードです。
「猫の特発性膀胱炎」では、膀胱粘膜の保護作用を示すグリコサミノグリカン層が薄い/壊れている、または、一部欠損している事が示されています。「カルトロフェン・ベット注射液」の主成分であるポリ硫酸ペントナトリウム(PPS)が、グリコサミノグリカンと構造上類似するため膀胱粘膜に対して同等の作用を発揮すると言われています。この薬は副作用がほとんどありません。
1回/1週間×4回で治療をスタートすることで、膀胱粘膜異常部の治癒促進効果が期待できる症例報告がなされています。
「カルトロフェン・ベット注射液」による補助療法の明確なエビデンスは示されていませんが、再発を繰り返すような難治症例に対しての補助的治療法になる可能性があります。
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