石堂動物病院

病院便りこのコーナーでは飼主のみなさまと動物に役立つ情報を
お伝えして行きたいと考えています。楽しみにしていてください。
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高齢猫のお世話の方法

<高齢猫の食事管理>

1)シニア用のフードとは?

ペットショップや量販店などで販売されている「シニア用」、「ハイシニア用」「高齢猫用」などの記載のあるフードに、規制や決まり事はありません。各メーカーにより製品のコンセプトは様々ですので、各成分を確認して選ぶことが大切です。

一般的に共通している栄養素に関する配慮は、

  • 抗酸化成分の強化
  • エネルギー量の調節
  • 高消化性のタンパク質への改善
  • 各臓器に対する配慮。例えば、腎臓や尿石症、心臓病などの疾患に配慮したミネラル(リンやナトリウム)の調整
  • 関節炎に対しての軟骨成分(グルコサミン、コンドロイチン硫酸、コラーゲン、ヒアルロン酸など)の配慮
  • EPD/DHAの増量→脳の機能の維持、認知症予防、胃腸の健康維持をサポート
  • プロバイオティクスの配合→腸内のミクロフローラ(細菌叢)のバランスが整えられ胃腸の健康を維持する。

などです。

持病を持っていない高齢の猫ちゃんであれば、病院などで薦められた
療法食は必要なく、シニア用と記載されているフードで大丈夫です。

2)療法食とは?

栄養成分の量や比率が調節され、特定の疾患、または健康な猫ちゃんの栄養学的サポートを目的に、獣医師の指導のもとで食事管理に使用されるフードです。適切な使用により持病の予後や症状の改善が期待できます。
健康な猫ちゃんには適してない製品や持病によっては使用が推奨されないものもあり、猫ちゃんの病態にあった療法食を適切に選択する必要があります。

老齢の猫ちゃんで持病を持っている場合には、市販のシニア用フードではなく、それぞれの病気に対する療法食を優先して選択してください。

<療法食の適応疾患>

  • 下部尿路疾患(尿石症)
  • 慢性腎臓病
  • 食物アレルギー
  • 慢性腸症
  • 糖尿病
  • 心臓病(肥大型心筋症)
  • 肥満/過体重

3)加齢に伴う食欲/消化能力の変化

加齢に伴って食事の様子や消化管の消化能力にも変化が出てきます。

多くの老齢の猫ちゃんにおいて、臭覚や味覚は加齢とともに減退するため、食欲の低下が見られることがあります。免疫力の低下により、自身の免疫力で潜在化させていた幼齢時にかかった「猫の鼻風邪」(猫ウイルス性鼻気管炎)のウイルスが活性化し、鼻詰まり/目ヤニなどの症状が再現し、食欲に影響を及ぼします。

消化能力にも変化が見られるようになります。タンパク質・脂肪の消化能力(吸収率)の低下が認められます。脂肪含有量の多いフード(例えば、ツナ系缶詰)を与えると、消化不良による下痢などを起こしやすくなります。
以前は食べきれていた量を、一度にまとめて食べられなくなり、食べ残しの量が増えてきます。また、関節炎口腔内疾患などの病気による痛みや不快感によって食事量が低下する場合もあります。

4)高齢猫の食事管理

  1. 消化器系に負荷をかけない、適切な栄養バランスを持ったフードを選ぶ
    猫の消化システムは人の消化システムよりも繊細で、様々な食材に対応ができません。多様な食物を与え過ぎると、消化不良を起こし下痢になります。その結果、体重減少につながることもあります。
    猫ちゃんの各臓器が健康な状態で長く維持できるように配慮されたフードを選択してください。体重減少があるので、体重を増やそうとチャレンジする場合でも、食事の栄養素を適切なバランスに保つことが重要です。
    例えば、エネルギー密度の高い脂肪は、猫が体重を増やすのに効果的ですが、下痢を引き起こす可能性があります。また、細胞の成長に必要なタンパク質は、消化・吸収において消化管への負荷を軽減するために高品質で消化しやすいものであることが必要です。
    メジャーなメーカーの高品質なシニア用フード、または、動物病院に相談して紹介された療法食を選択すると良いでしょう。
  2. ストレスのない環境で食事をさせてあげる
    食事中に猫ちゃんがストレスを感じることなく、快適に食べられる環境を整えてあげることが大切です。どのようなことに配慮するのかを下記に示します。
    • 食事の場所は、トイレや遊ぶ場所と離して確保し、食べている時はジロジロ見ない。
    • 1日に与える食事の総量を3〜5回程度に分けて与える。分割して与えることによって食べるという行動に費やすエネルギーが減少します。また、消化管の食物を消化・吸収するという働きも軽減させることができる。
    • 頭を下げての食事は老齢の猫にとっては負担になります。床面に近い高さからフードをすくい上げ/吸い上げ、飲み込む行動は案外体力を使うようです。この負担を少しでも軽減してあげるために、顔の位置に合わせるように食器を台の上に置くなどして、高さを確保してくだい。そうしてあげることで、フードをすくい上げ/吸い上げる行動が楽になり、食事全体が楽になり、しっかりと食べてくれるようになるかもしれません。

      免疫抑制剤:シクロスポリン

    • フードを少し温め、美味しそうな匂いを漂わせ、少しでも臭覚を刺激し食欲を促進させましょう。開けたての缶詰/パウチなどのウエット系フードはそのままあげても大丈夫です。しかし、開封し冷蔵庫で保存したものは、冷たくなって美味しそうな匂いが消えてしまいます。冷蔵庫から取り出したウエット系フードを使う場合は、小皿などに必要量を移し、電子レンジで少し温めると美味しそうな匂いが復活します。
  3. 食事の変更を考える
    食事の環境を再整備しても食欲の改善が認められない場合には、フード自体の変更を考える必要があります。高齢猫は嗅覚や味覚が低下しているため、フードは特に食欲をそそるようなものでなければいけません。
    • ドライフードの場合は、水やぬるま湯、ささみのゆで汁などでふやかし、少し冷ましてから与えてみてください。食べやすく、消化しやすくなって消化管の仕事を助けます。
    • 今まで与えていたドライフードの上に、缶詰/パウチなどウエット系フードを少量トッピングする。または、混ぜて与えてみてください。ウエット系フードの美味しそうな匂いに誘われて食いつきが良くなるかもしれません。猫ちゃんに対しての嗜好性が良いツナ(マグロ)系のものがおすすめです。
    • 今まで食べていたドライフードを食べる時に、食べにくそうな仕草や口が痛そうな仕草が見られた場合は、老齢に伴う口腔内の病気(歯肉炎や口内炎)がある可能性があります。そのような時は動物病院で治療を受けるともに、食事の変更を考慮してください。より小さな粒のドライフードへ、または、缶詰/パウチなどのウエット系のフードに変更してみてください。よりペースト状にするために水分を加えてみてください。口当たり、喉越しが良くなれば食欲が増進するかもしれません。
    • 缶詰/パウチなどのウエット系フードは水分を含有していますので、栄養素を含んだ固形成分と水分の両方を同時に摂取することになり、水分補給=脱水対策にもなります。
    • 老齢の猫ちゃんの中には、同じフードを3日連続で食べないグルメな(?)猫ちゃんもいます。そのような猫ちゃんには、シニア用食/療法食の中から適切なフードを数種類選びストックしておいてください。2〜3日毎にフードを変えて与えることで食欲が維持できるでしょう。

いろいろ工夫しても十分に食べてくれないような時は、
食欲増進剤の投与について獣医さんに相談してみてください。

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