高齢猫のお世話の方法
猫ちゃんが動けず寝たきりになったり、老衰や病気で食事が上手く取れなくなった場合に必要なことをまとめてみました。
食器から自力で食事が取れなくなったら、伏せの姿勢にして、食べやすいペースト状のフードを手で少しずつ口の前に運んで与えてください。自力でペロペロを舐めるように食べてくれたらOKです。自力で舐めなかったり、いつまでも口の中にフードが残っているような状況になったら強制給餌を始める時期です。
強制給餌とは、病気などで一時的に食欲がない動物や、老齢のため自力で食べ物を食べられなくなった動物を介助する目的で、ペースト状にしたフードを注射ポンプを使って口の中に流し込んで食事を与える方法です。
<準備するもの>
<強制給餌の方法>
強制給餌を行う場合に最も注意する事は、喉奥に多くに流動食を一度に流し込まないように、少しずつの量を、ゆっくりと与える事です。無理して一気に1回量を多く流し込むと気管に流れ込んで誤嚥性肺炎の原因となります。
注射ポンプは繰り返し使用していると滑りが悪くなります。そのようになったら新しい注射ポンプに交換してください。また、水を飲ませる場合も同じように行なってください。
強制給餌に必要な注射ポンプは動物病院で分けてもらえます(必要な方は当院受付に申し出てください)。また、流動食やそれに変わるリキット製品も動物病院で入手可能です。
強制給餌の実技に関しましては、猫ちゃんと一緒に来院してもらえれば実技指導を行います。また、インターネットで「猫の強制給餌」と検索いただければ、いくつかの動画が見られますので、そちらも参考にしてください。
寝たきりで立てなくなり、自力でトイレに行けなくなった状態では、積極的におむつの利用を検討しましょう。猫用のおむつも市販されています。最初は嫌がる子も多いですが、慣れるとケアがとても楽になります。ただし、おむつは蒸れによる皮膚の炎症が怖いので、こまめにチェックして、少しでも汚れていたら交換します。そうすることによって陰部/肛門周囲の汚れ、蒸れを予防できます。長毛の猫ちゃんでおむつを着ける場合は、お尻周りの毛をカットするとお手入れも楽になり、皮膚トラブルのリスクが下がります。
寝たきり生活を送っている場合は、できるだけ伏せの姿勢(肺が最も拡張し呼吸が楽な姿勢)で過ごさせるように工夫をしてください。横臥姿勢(横向きに寝ている姿勢)でしか過せない場合には、2〜3時間ごとに右下の横臥姿勢から左下の横臥姿勢へと体位を変えてあげてください。このような体位変換をすることで、床ずれの発生を予防し、また、左右の肺の拡張を均等に呼吸を楽にしてあげられます。
床ずれ(褥瘡:じょくそう)とは、持続的な皮膚の圧迫により血行が悪くなり皮膚が傷つき、ひどくなると皮膚に穴が開き細菌感染を起こした病変(潰瘍)です。
床ずれは、頬・肘・肩・腰など、骨が出っ張っている所で起こりやすいため、赤みが出たり毛が薄くなったりしていないかをこまめにチェックしましょう。床ずれの気配が見られた時には、その部位の下にクッション性の高いタオル・毛布や介護用マットを敷いてあげてください。皮膚に穴が開いたような病変(潰瘍病変)が見られたら、すぐに動物病院での治療を受けるようにしてください。
寝たきりになった高齢の猫ちゃんの血行を促すために、からだ全体を優しく、ゆっくりとマッサージをしてあげることも大切です。マッサージは猫ちゃんとのコミュニケーションにもなりますので、ストレス軽減にもつながると考えられています。ただし、痛がる素振りを見せた場合は、すぐにマッサージを中止して、獣医師に相談するようにしてください。
寝たきりの場合は、唾液などの誤嚥を防ぐため、頭が少し高めになるように枕やタオルを頭の下に置いてあげるようにしてください。嫌がる猫ちゃんの場合は、食後1時間だけでも頭は高めの位置に保っておきましょう。